ベースだけ堪能! サラウンドのセンタースピーカーがトニー・レヴィン専用だった件 キング・クリムゾン・アット50 スタジオライブ 5.1ch

2023年7月23日日曜日

[サラウンド 5.1ch 7.1ch ドルビーアトモス] [映像] 音楽 [音楽] プログレッシヴ・ロック



In the Court of the Crimson King - King Crimson at 50 Film - Expanded


音楽のサラウンドというものには
遊び心のあるものと、そうでないものがある。前者はドキッとするようなリアルな効果音が聞こえたり、楽器が自分の周囲をグルグルしたり後方から迫ってきたり。後者はライブ会場の雰囲気やスタジオでの奏者の距離感や定位というものを演出したりする。どちらにしてもサラウンドは楽しいものだ。

ここで取り扱うキング・クリムゾンのスタジオライブは後者に該当するのだが、ひょんなことからこれで遊ぶことができた。遊び心のないミックスの音源で能動的に遊んでみたら画期的と言えるような楽しい体験になったので、それについて語ってみたい。


映画のおまけで収録のスタジオライブ
これを聴いていてふと思った。
「センタースピーカー鳴ってないのかな?」
5.1chと銘打っていても実際は4.1chだったりする場合もあるのでセンタースピーカーに顔を近づけてみる……。
すると、そこではトニー・レヴィンのベースだけが鳴っていた。低い音程には指向性が無いとよく言われるが、つまりそういうことだ。

この事実を知ってしまったからにはアレをやるしかない。センターとウーファー以外のスピーカーケーブルは全て外し「真ん中」と「低音」だけしか音が出ない状態。1.1chでの視聴だ。

もちろん、まずは普通に全編を視聴を終えてからだ。
演奏内容と音質の良さ、映像のカッコ良さ、そして選曲、その全てが素晴らしかった。

さて、ワクワクしながら外すべき8本のスピーカーケーブルを取り去り1.1ch状態で再生する。すぐに気が付くのは厳密にはベースのみが鳴っているのではないということ。とはいえ基本的にはベースとビル・リーフリンのキーボード(いわゆるフェアリー・ダスティング)が聴こえてくるだけなので、実際かなりベーストラックのみ再生している感覚に近いと言える。

“フェアリー・ダスティング担当”などというと大したことをやっていないような気がしてしまうビル・リーフリンなのだが、こうして聴いてみると結構頑張って色々弾いているのが分かる。

キーボードでは他に『Cadence and Cascade』でのジェレミー・ステーシーのピアノもしっかりとセンターから出ている。また、時には一部のシンバルやギター、ヴォーカルなどが僅かに聴こえてくる場合があり、パット・マステロットの鳴らすサンプリング音源に関しては割としっかりと聴こえてくることが多い。


実際に全編通してベースだけ聴いてみた感想
結論から言うとベース好き、トニー・レヴィン好きには堪らない聴き方である。キング・クリムゾンのアンサンブルの中にあっては捉えにくいフレーズが全て聴こえてくるし、繊細で微妙なニュアンスも全て分かる。「ビィ~ン」という弦の振動や「キュイーッ」と弦を擦る音なども全て分かる。これを聴いてからまた全体を聴く楽しみもある。

特に面白いと感じたのはラストの『Discipline』だ。2本のギターとドラムに複雑に絡み合うスティックが何をやっているのかはベーストラックだけを再生しなければ到底分からないものだ。

応用編としてはスピーカーを外すのではなくアンプ側でセンターの音量を上げるという方法もある。メキシコライブのミックスで最初はベースをギリギリまで大きくていたが後でバランスを考えて控えた、というビル・リーフリンを羨ましいと思った自分としては、いずれ是非やってみたい遊びだ。



例外としては
『Sailors Tale』の前半部分が挙げられる。ここではバンド全員の演奏がセンターから出ている。全員が一丸となって突進するような楽曲の印象を強める狙いが感じられる。しかし途中、一度鎮まってからまた激しくなる後半部分ではMIXが一変、そこからはまたベースとキーボードだけになるので、熱のこもったトニー・レヴィンのプレイを存分に堪能することができる。


センター以外のスピーカーからは?
さて、せっかくなので他の4つのスピーカーはどうなのかやってみることにした。それぞれのケーブルを抜いたり差したりして1台1台のスピーカーから音出しする。
それで分かったのは多分このミックスは前方3chで完成されていて、リアの2chはエコー成分で空間演出に使っているのだと思われる。冒頭で語った遊び心のあるものと、そうでないものでいうと後者に該当するだろう。
気が向いたら前方3chのみでの全編視聴もしてみたい。脚色のない、生々しい演奏が楽しめそうである。


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