ディシプリン期のキング・クリムゾンをとことん堪能できるBOXの 『LIVE音源』を聴きまくる King Crimson - On ( and off ) The Road (2016)

2021年3月16日火曜日

[サラウンド 5.1ch 7.1ch ドルビーアトモス] [音楽] プログレッシヴ・ロック


On (and Off) the Road

11CD+5DVD+3Blu-rayの計19枚組のこのボックスに収録された夥しいLIVE音源の数々。
さらに幾つかのスタジオセッション音源。
サラウンドや映像コンテンツに比べると動機が弱く圧倒的ボリュームということもあり、それらになかなか手を出さなかった。
だが一旦聴き始めると楽しくてどんどん聴くことができた。
全部聴き終えてみると全ての音源がそれぞれ面白かった。



The Road To Absent Loversの始まり
とりあえず15.BLU-RAYに収録されている『Absent Lovers』の5.1chサラウンド版を最後の楽しみに残しておいて、ディスクの番号順に聴いていくことにした。The Road To Absent Loversの始まりである。


Disc 2.CD Live in Japan 1981/12/18/東京
まずはここから。
聴き始めはあまり「良い音質」ではないなぁ、と感じたのだがしばらくすると会場の雰囲気や空気感が味わえる「良い音源」なのが分かった。
バンドの演奏も後半になるにつれ盛り上がっていく。
7.『Manhattan(Neurotica)』8.『Indiscipline』のヘヴィ曲の連続という流れが良い。
9.『Neal and Jack and Me』の未完成さがちょっと面白い。
10.『Elephant Talk』のアレンジも好きな感じ。
ラストは11.『Larks' Tongues In Aspic Pt II』の素晴らしい演奏で締め。特にドラムがスゴかった。

Disc 4.CD Live at Alabamahalle 1982/9/29/ミュンヘン
これは映像コンテンツとして収録されているものと同じライブの全長版。
先に映像を観ているので1曲目『Waiting Man』などは特に映像アリの方がイイと思ってしまう。しかし作品としては全長版のコチラの方がより価値が高く楽しめる。
音質は非常にクリアでギンギンとしたベース音が良く聴こえる。
各演奏者のノリが良過ぎるためか、いかにもライブという荒っぽい瞬間があるのがこの音源の醍醐味。

Disc 5.CD Fragmented 1983/1/17-30/スタジオ・セッション
録音の良さが最大のポイント。
バンドがそこで演奏しているかのような生々しさを感じられるという意味で嬉しい音源。
音楽的にはどれも曲として固まっておらず、いかにもセッションという印象だが部分的に『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』収録曲の元ネタを聴くことができる。
15曲目『Yoli Yoli』は『Waiting Man』をさらにアフロ寄りにしたような曲。マリンバ的なパーカッションの音色を聴いているとブリューが参加した坂本龍一のアルバム『左うでの夢』収録曲『Tell'em To Me』が想起される。


Disc 7. & Disc 8.CD『Absent Lovers』1984/7/11 Live at The Spectrum/モントリオール
2枚組CDライブアルバム『アブセント・ラヴァーズ』はとりあえずスルー。

Disc 9.CD Are you recording Gary? スタジオ・セッション/レコーディング音源
1.『Are you recording Gary?』は『Larks' Tongues In Aspic Part III』の制作過程らしき音源。スカッと爽やかな完成版よりもヘヴィな印象。この時点のバージョンの方が『Larks' Tongues In Aspic』のタイトルに、よりふさわしかったかも知れない。
2.『Discipline Redux』
3.『Beat Redux』
4.『Three of a Perfect Pair Redux』の3曲はこの時代の各アルバムの音源をエディットしたミックス音源のような作品。どうでもいいような感じもするが聴いてみると意外な感想。正直あまり好きではないアルバム『Beat』の楽曲がトラックの引き算によってはとてもカッコ良かったり美しさに感動したりする。スカスカのアレンジで聴けばあの『Beat』も魅力的な演奏と音楽性で作られていた、という新しい発見があった。

Disc 16.CD Live at Moles Club 1981/4/30/モールス・クラブ・バース・イングランド
正にブートレッグな音質で最初「これを通して聴くのはちょっとキビシイかなぁ……」と思わせるものがあった。後で調べるとまだバンド名をDisciplineとしていた初期の頃のファースト・ライブなのが判った。客のノリは良くて結構盛り上がっている。ライブの定番曲である『レッド』『太陽と戦慄パート II 』を既に演奏している。
1.『Discipline』流石はバンドを象徴、コンセプトを体現した楽曲。この時点で既に完成の域に達している。
2.『Thela Hun Ginjeet』でブリューがおかしなタイミングでセラ・ハン・ジンジ~♪と歌うので、入り方間違って訳分からなくなってるのかな?と思ったがまだ曲が出来上がってないだけだった。
3.『Red』気怠く退廃的な雰囲気で進行。ノリノリのレヴィンのベースに相対するブルフォードのぶっ壊れドラミングというコンビネーションが凄まじい。暗い地下迷宮での追跡劇といった趣の独特の緊張感がある2本のギターは、それぞれお互いの出方を伺っているような感覚がして面白い。
4.『Elephant Talk』このダラーっとした雰囲気にニュー・ウエーブを感じる。暗く気怠く踊れるノリ。
7.『Indiscipline』ブルフォードのイントロの叩きっぷりにジャズを感じる。最後まで生ドラムでの尋常ではない手数の連続に快感を覚える。
9.ラスト『Larks' Tongues In Aspic Part II』レヴィンのベースプレイの好演が楽しめる。バンドとしても上手くまとまったレベルの高い演奏。

Disc 19.DVD The Town and the City
ディスク19は1枚のDVDに複数のライブ音源がハイレゾで収録されている。
内容はどれも高音質かつ演奏も素晴らしいものばかりだ。
以下、5つの音源の感想。

Philadelphia 1982/7/30
ハイテンションな凄みのある演奏にバンドの一体感、グルーヴ感までも伴った素晴らしいライブ音源。全員の調子の良さがハンパではない印象。特にブルフォードは調子良過ぎな感じで畳み掛けている。レヴィンのノリの良さ手数の多さはいつもの事だが、ここではよりファンキーなベースが堪能できる。フリップのシーケンシャルフレーズには鬼気迫るものがあり、ギターノイズの凄まじさには感動すら覚える。
この音源は録音も特に素晴らしく鮮やかな立体感がある。ドラム、ヴォーカルがかなり生々しく録れている。ベースの音量がデカいのも魅力。

Asbury Park 1982 1982/7/31
上記フィラデルフィアの翌日。前半はテンポが遅く各自もたつき気味であまり余り良くない演奏と感じるが、だんだんと良くなっていく流れがある。
11.『Indiscipline』あたりからテンションが上がってくる。ここではブルフォードのイントロの叩き、フリップのプレイが良い。またブリューの歌が表情豊かで声を潜める感じが魅力。
12.『Neurotica』で爆発、これは凄まじい。
ラスト15.『Larks' Tongues in Aspic Part II』この曲のクライマックスはベースが主役という位レヴィンが活躍している。ベースの音量がすごく大きくなったり聴こえ辛くなったり不安定なのはライブならでは。

Cap D'agde 1982 1982/8/26
ヌーディスト村を擁するフランスのリゾート地キャプ・ダグドでのライブ。ロキシー・ミュージックの前座としての登場だがのっけから客の盛り上がりがスゴイ。熱気たっぷりな会場の空気感を上手く捉えた優れた録音だと思う。様々な会場のノイズや客のおしゃべりを拾っているのが空間を感じさせ、立体感を醸し出している。
演奏は一定のテンションの高さを維持しつつスタジオ並みの緻密さもある。ブリューの歌は客の反応に呼応するかのように、いつもより叫んでいる。
8.『Indiscipline』は煽るようなブルフォードの叩きが異様な盛り上がりを見せるのだが惜しくも途中でテープが止まってしまい、そこでこの音源は終わってしまう。

Frejus 1982 1982/8/27
上記キャプ・ダグドの翌日で、こちらもロキシー・ミュージックの前座。
映像作品『The Noise Live At Frejus 1982』の全長版にあたる。
とてもクリアな音質で各楽器を明確に聴き分けることができる。特にドラムの粒立ちが良くリアルな音像を楽しめる。一つ欲を言えばベースの音量が割と控えめなのが物足りない。
重複コンテンツの多いこのBOXの中でも、やたらと重複しているコンテンツがコレ。
映像作品としてはトリミングされた16:9とオリジナル4:3の2つのバージョンが収録されていて、音源としては『17.CD Europe 1982』とこのDVDに収録の『Frejus 1982』『Europe 1982』の3つのバージョンを収録。微妙な差異のある重複コンテンツが多いこのBOXで最も重複している。


ついに辿り着いた『Absent Lovers』の5.1chサラウンド版
Disc 15.BLU-RAY

『Absent Lovers』の5.1chサラウンド版はこの『Three Of A Perfect Pair』関連のブルーレイに収録されている。
サラウンドとしては歓声や拍手などがリアからも聞こえてくるのでCDよりもホールらしさを感じられる。演奏中はリアからのギターの残響音で広がりを演出。センターはバランスが崩れない程度に左右と同じ音が出ているようだ。サブウーファーは大げさに使われてはいないが全体に重みを加えている。
サラウンドはある程度の効果にとどまっているのだが、ハイレゾ化による音質面の向上は大きいと感じた。CDよりも分離が良く、演奏の迫力、臨場感が増している。特にドラムの輪郭のハッキリとした力強さに顕著だ。


こうやってこの時期のクリムゾンのライブをこれでもかと聴きまくってみると『Red』『Larks' Tongues in Aspic Part II』の2曲のライブでの重要性が分かる。やや長尺でゴリゴリにヘヴィーなこれらのインスト曲がなければ、全体にもっとポップな印象になっていた筈だ。
さらに『Indiscipline』は最も重要で、どのライブにおいても特異点ともいうべき強烈なパフォーマンスを残している。

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