【子供心にも哀しみと絶望】アンデルセン童話 にんぎょ姫【東映まんがまつり 1975年春】

2019年3月30日土曜日

[映像] アニメ


世界中の人々から愛される童話『人魚姫』のストーリーをほぼ忠実に再現。
ラスト、泡になった主人公の「その後」もモノローグで語られ、夢のある色彩で表現される。

しかし如何にラストの画面が美しく彩られようとも、当時これを観た多くの未就学児や低学年児が劇場を後にするとき心に抱かされたのは哀しみと絶望。
人魚姫の末路にアンハッピーエンドの物語、というものを教えられたはず。

OPとEDにはデンマークでのロケ映像が使用され導入と結びの語りが入る。
原作にはなかった設定としては、人魚姫には「マリーナ」王子には「フィヨルド」の名前が与えられた。また、オリジナルキャラも登場する。


オリジナルキャラ「イルカのフリッツ」
家族達には「自分の家来」という体にしているが、実質は気のおけない友人で遊び相手。
そして末っ娘であるマリーナにとっては弟のような存在。

これが効いている。色々と。

怖い魔女の所へ行こうとするマリーナをフリッツが止めようとする場面。
マリーナは「二度とそんなこと言ったら絶交よ!」と怒りも露に言い放つ。
友情を盾に取るとは何とも惨いが、家族への裏切り以上に主人公の恋愛衝動の強さを印象付けるのに成功している。

『人魚姫』という童話は教訓話として捉えると感情移入が難しく、愛によって傷つき滅んでゆく主人公の運命を傍観する立場で読んでしまう。
この映画では、観客はフリッツの視点を得ることによってマリーナを慕い心を痛め涙を流すことができる。

これで主人公の恋が実っていれば、それは若さの特権によって得られたと称えられただろう。
しかしこの物語は作者自身の失恋の経験によって創られたという。


素敵な悪役キャラ
マンタをモチーフにしたという魔女の造形。70年代中盤頃のこういった悪役デザインは魅力的。
また魔女の住処に至る景色の背景美術は美しくも邪悪に描かれていてこの作品の価値を高めている。

魔女は悪役といっても主人公から頼みに来たのだし、不利な諸条件も事前確認の上での契約なので、この魔女そんなに悪人じゃない。
また、過酷な選択肢とはいえ最後には主人公が生きる道も与えている。


官能的表現
作画・演出両方の面で注目すべきは人魚から人間への変身シーン。
薬を飲み苦しみ悶えるマリーナの唇のアップが大人の女性のようで、人魚から全裸の少女への変身と併せて生々しくエロティックに描かれている。
『人魚姫』には性的な暗喩があるとされるが、そこに一歩踏み込んだ野心的な表現だと感じた。

この作品で作画監督を務めたアニメーター「奥山玲子」はNHK連続テレビ小説『なつぞら』で広瀬すず演じる主人公「奥原なつ」のモデルであると考えられている。


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