【朱色の終末感とたくさんの気の利いたセリフ】劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーション (2010)

2019年4月14日日曜日

[映像] ストップモーションアニメ・人形劇


1978年~1982年ポーランド制作のストップモーションアニメTVシリーズをリマスター、再編集した2010年公開の劇場版。ビョークが新規テーマ曲を追加し海外では3D版が公開、販売されている。日本では2D版のみ2015年に劇場公開、販売。

この作品の成り立ちにサンリオの『くるみ割り人形3D(2014)』との類似性を感じた。1979年に公開されたサンリオのストップモーションアニメ映画『くるみ割り人形』を極彩色化(リマスター)して3D化、きゃりーぱみゅぱみゅが新規テーマ曲を追加している。もしかしたら本作『ムーミン谷の彗星(2010)』にヒントを得た企画だったのかもしれない。

日本語吹き替えはナレーションの白鳥英美子をはじめTVアニメ『楽しいムーミン一家(1990~)』でおなじみのメンバーが担当。子安スナフキンは個人的に最重要。


あらすじ
ムーミン谷に赤く不気味な尾を引く彗星が接近。
ジャコウネズミは「彗星が落ちて地球が滅びる」と語る。
真相を確かめるべく天文台を目指すムーミンとスニフは旅の途中で仲間たちと出会う。
ムーミンの物語の中でも特別に危険に満ちた冒険が描かれる本作。
終末的世界観を演出する朱色に染まる空と朱色のライティングが非常に印象的。

フェルト製のパペットは体は立体的だが、腕や脚がペラペラで見慣れるまでは相当な違和感あり。
背景も例えばイカダや机などが平面で作られており、それらを独特の表現として楽しめないとツライものがある。


ガーネットを拾いに谷間に降りたスニフ
無数のガーネットのある谷間の表現は出色。その色彩、きらめく赤の美しさに魅かれる。
ここでのスナフキンとスニフの一連のやり取りが面白い。
欲張った結果、大トカゲに襲われる羽目になったスニフは結局一つも持ち帰れない。
嘆くスニフに掛けたスナフキンの言葉、その思想に大いに関心させられる。


旅の道すがら立ち寄ったお店での一コマ
まずジュースを飲んだスニフを筆頭に各々が欲しいものを選ぶ。
だが支払いの段になって誰もお金を持っていないことに気付く!
それに対する心優しい店主の機転の利かせ方がニクイ。
スナフキンだけは新品のズボンに納得していなかったのがポイント。

Qバートのような顔をしたおばさんだ。



いよいよ終末感が高まる干上がった海底の場面
美しくもおどろおどろしい海底を一行が竹馬で進む場面も見所の一つ。
出会いの場面では食虫植物に囚われたスノークのおじょうさんをムーミンが助けたが、
ここでは逆に大ダコに襲われピンチに陥ったムーミンをスノークのおじょうさんが助けている。

世界でもトップクラスの男女平等を実現しているというフィンランドらしいエピソードだと言える。



ただただ「子ねこ」を可愛がるスニフ
さんざん所有欲や身勝手さをアピールしてきたスニフだが、ついに終盤避難先の洞窟でブチギレる。ヤケになって「全部どうでもいい」などと腐るが、可愛い「子ねこ」を見付けると全て忘れてしまい文字通り猫かわいがりする。そんなスニフに今までのことはチャラにして観ているこっちが癒されてしまう……ワガママで問題の多いキャラも素直さ純粋さ故。最後のこの場面では、彼の省みない幼児性が愛らしさに転じた。

原作を読むと、第1章でスニフが「子ねこ」と一緒に洞窟を見付ける場面が描かれ最後に繋がるのだが、この映画では省略されている。



劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーション 通常版 [DVD]



"ムーミン パペット・アニメーション DVDスペシャルBOX ( 3,000セット限定生産 )"

ムーミン パペット・アニメーション DVD-BOX (通常版)


1990年TV放送版。初代ムーミン声優、岸田今日子さんが全ての役を演じるシリーズ完全版。全78話収録。



ムーミン パペット・アニメーション DVD-BOX


2012年TV放送版。松たか子さんと段田安則さんが2人で全ての役を演じる。全50話収録。
松たか子さんの演技に対する評価が非常に高い。


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