セリフは一切なし、初めと終わりは実写
ケーキをテーブルに運ぶ仮面の女性。恐らく監督自身。
ケーキには映画タイトル『Blood Tea and Red String』の文字。
ケーキから捻り出した卵には作者の名前『by CHRISTIANE CEGAVSKE』の文字。
その卵をティーポットに入れ、蓋を閉めると暗転し物語が始まる。
趣向を凝らしたオープニングである。
意味ありげに卵をティーポットに入れる行為にはちゃんと意味があり、それはラストで明かされる。
映像作品という虚構世界をより面白くするための仕掛けがそこに施されている。
原題は『Blood Tea and Red String』なので赤い鎖ではなく赤い糸が正しい。
鎖の方がゴシック風でウケが良いと判断したのだろうか。若しくは別の意図か。
東洋では「運命の赤い糸」だが、西洋で赤い糸といえばギリシャ神話の「アリアドネの糸(赤い毛糸玉)」が定番。
鎖の方がゴシック風でウケが良いと判断したのだろうか。若しくは別の意図か。
東洋では「運命の赤い糸」だが、西洋で赤い糸といえばギリシャ神話の「アリアドネの糸(赤い毛糸玉)」が定番。
擬人化された生き物たち
素朴な生活を営む職人で、カラスのような頭に獣耳をもつ「樫の木の下に住む者ら」
貴族の格好をした「白ネズミ達」
賢者のような「カエル仙人」、女の顔を持つ「人面蜘蛛」
彼らと「美女人形」をめぐる顛末。
そして人形の腹から生まれた「ハーピー」
そこには波乱に満ちたストーリー展開がある。
「樫の木の下に住む者ら」は自然の中で遊んだり花の世話をして暮らす。庭のヒマワリには人間の顔。
「白ネズミ達」は室内でカードゲームに興じ勝ち負けで争いをする。庭のヒマワリには髑髏の顔。
「カエル仙人」はどちらにも分け隔てなく助力を惜しまない存在。
「白ネズミ達」は室内でカードゲームに興じ勝ち負けで争いをする。庭のヒマワリには髑髏の顔。
「カエル仙人」はどちらにも分け隔てなく助力を惜しまない存在。
丹念に作られた映像
ストップモーション・アニメーションの映像はただ何も考えずに観ているだけでも面白く、その技術には感嘆させられる。 特に「樫の木の下に住む者ら」があやとりで遊ぶ場面は素晴らしい。
白ネズミの依頼で金貨と引き換えに美女の人形を作る「樫の木の下に住む者ら」
人形が人形を作る映像、というのが何とも面白い。
両の頬の赤い丸から人形のモデルとなったのはタイトルで登場した女性なのだと分かる。
赤と白のコントラスト
三人?の白ネズミ達が白紙のカードでポーカーのようなゲームに興じる様がシュールだ。
タイトルにもなっている「血のお茶」を飽きることなくカップに注ぎ飲み続ける。
人形を抱きながら、その口にも血のお茶を注ぐ白ネズミ。床にこぼれ血だまりになる。
血のお茶を飲み続ける様を見続けていたら無性に赤ワインが飲みたくなてしまった。赤ワインはあんなに真っ赤ではないのだが……
異世界の異文化
登場人物達の行動に狂気を感じたり意味が分からないこともしばしば。
だが彼らは正気だし、彼らには彼らなりの行動原理がある。
同じ理をもたないものから見れば、人間の行為だって意味不明さと狂気に満ちている。
純粋さ、ひたむきさ
人形を愛し、強い慈しみを行動で示す一人の白ネズミの哀れな姿は、観るものを切ない気持ちにさせる。
監督Christiane Cegavskeについて
1971年生まれのアメリカ人。女性。ストップモーション・アニメーション作家。
人形や衣装、舞台の作成、撮影など全てを本人が手掛ける。
現在、新作『Seed in the Sand』を制作中。その一部は短編『A Dream of Dolls Dancing/人形舞踊の夢(2017)』として公開されている。
実写の短編作品『The Doll Maker(2002)』
だがここでも繰り返されるモチーフにCHRISTIANE CEGAVSKEの作家性を見出すことができる。
本作で音楽を担当したMark GrowdenのMV『Coyote(2010)』
『Blood Tea and Red String』ではフォーキーなアンビエントが映像にマッチしていた。
こちらはワルツのリズムと絞り出す歌声がダークな雰囲気のボーカル曲。
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血のお茶と紅い鎖
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