『ルイスと未来泥棒 3D (2007)』感想と3D映像の評価 巧妙に仕組まれたサプライズの向こう側

2021年4月15日木曜日

[サラウンド 5.1ch 7.1ch ドルビーアトモス] [映像] 3D立体視 [映像] CG [映像] ディズニー


ネタバレはNG
タイムトラベルを扱った時間ものSFで、登場人物に関するミステリー要素もあるためネタバレが許されない。ただし、そのミステリー要素がかなりの曲者だ。

初見で感じたとりとめのない脱線
激しくクセの強いキャラと理解を超えた出来事がてんこもりな中盤の展開。
「一体いつになったら本題に入るのだろうか?」
と、呆気にとられながら鑑賞することになる。
これは意図してそう作られていて、あの手この手で観客の目を本題から逸らせることで作品として成り立っている部分がある。





巧妙に仕組まれたサプライズの向こう側
ところが終盤で、内容の大部分が伏線だったことが分かり驚かされる。
見事なサプライズだが、それは一度しか体験できない貴重なものだ。
二度目以降はもう驚くことはできない……

しかしそこからが本番
回を重ねるほど良さが分かってくる味わい深い傑作。
人生において家族という存在の大切さ。
過去のネガティブな出来事に囚われた人間の末路がどんなものかということ。
……それら普遍的なテーマをあらためて教えてくれる。

主人公について鑑賞上のポイントを挙げてみると
・孤児である主人公が、母親を探すという目的で行動していること。
・発明やものづくりに関しては天才的な能力を持っていること。
さらには主人公の性格の悪い部分、克服すべきポイントも挙げてみる
・他人の迷惑を考えない。他人の言葉を聞こうとしないなど自己中なところ。
・失敗するとキレて物に当たって台無しにしてしまうなど感情的なところ。
・現在を悲観し過去をネガティブに捉えているところなど。
クリエイティビティの高い人間ほど自分の事ばかりで他人に配慮しない傾向があるという。序盤これでもかと描かれるルイスのサイコパスっぷりを観ていると、世界でも超一流のディズニーのアニメ制作スタッフ自身の人間性についても投影されていたりするのかな?と想像する。


さらに深く鑑賞すると
光と闇の二項対立みたいな表裏一体のキャラクターの描き方をしていたり、ブレードランナー的な問題も含まれていたりと、SFらしい面白味のある優れた作品なのが分かってくる。


哀れ過ぎるヴィラン

余りの哀れさゆえ、非常に強い印象を残すヴィラン「山高帽の男」


特に由来など語られることのないアイテムなのだが、このバインダーの表紙を見ていると涙が込み上げてくるものがある。
おそらくは作中登場するアイスクリームショップ『PLAYTIME PLANET』に関連するものだと思われる。

このユニコーンのバインダーによく似た日記帳をアマゾンで見つけた。



手堅く充実した3D映像
全般的に派手さはないが、常に充実した立体感・奥行感が感じられる。
後半のクライマックス展開からはより強い視差が設定され、ショッキングな飛び出し場面なども用意されている。

冒頭、赤ん坊を孤児院の玄関に捨てる母親

このシーンを観ると、一番手前から始まる奥行き、建物の大きさ、降りしきる雨の層など、画面全体にしっかりとした3D設定がされているのが感じられる。雨は観ているコチラ側にまで振りかかってくる。

未来からやってきた少年「ウィルバー」のタイムマシンで未来の世界に連れていかれる主人公





レトロフューチャーな理想の未来世界。
ユートピア感満載の都市空間をダイナミックに飛び回る場面を大画面の3Dで観る。
高いアトラクション性があり何度でも楽しめる。
この場面の視差は比較的弱めなのだが、かなりスリリングな構図が展開するので丁度良いあんばいと思う。空間や建物の巨大さは3D映像として十分に表現できている。
この場面で使われたBGM『To The Future!』も素晴らしい。


何気ない場面だが

この地面に生えた草の嘘っぽさ。人工的な未来感が好きだ。
一番手前から始まって向こうの方まで段階的奥行が感じられるのが気に入っている。

作品中最も3Dの立体感を感じられるディストピア場面


視差の強さはクライマックスに近づくと一気に高まって、より充実した3D空間を見せる。
やはり暗い場面にこそ3Dの真骨頂があると思う。


サラウンド音声の評価
英語、日本語ともにDTS-HDマスターオーディオ5.1chロスレス収録なので、オーケストラの音などの音質はかなり良い。
サラウンドに関しては一応は効果を使った場面があるかな、という程度。


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