『ピンクフロイド/狂気(1973)』ようこそ、素晴らしき狂気の世界へ [SACD 5.1chサラウンド(2003)] (前編)

2018年7月31日火曜日

[サラウンド 5.1ch 7.1ch ドルビーアトモス] [音楽] SACD [音楽] プログレッシヴ・ロック


広大無辺な空間に吸い込まれていくようなイメージを喚起する楽曲群。
様々なサウンドエフェクトを駆使する音響。
……と、非常にサラウンド化に適した素材だと言える。それがどう形になっているのか。


どんなアルバム

1967年にデビューしたピンクフロイドが1973年に発表した5thアルバムで、
ロック史上最も多く売れたアルバムとされる。
前作までの実験的要素は薄れ、楽曲、アルバムの構成力ともに高い完成度を持つ。

全体を通して一曲と捉え鑑賞することができるコンセプトアルバムとして作られ、
レコードの時代のA面B面の区切り以外に曲間は無くシームレスに繋がっている。
(ちょうどこの時代のロックアルバムには同様なスタイルの作品が数多く存在している)

原題の『The dark side of the moon』を直訳すれば月の闇の側、つまり月の裏側。
地球から観るといつも隠された部分は心の闇、人間の狂気を象徴していて、
それがこのアルバムのテーマだと考えることができる。
そこには薬物により精神を蝕まれバンドを去った初期の中心メンバー、
「シド・バレット」についての実体験が色濃く影響しているという。



ピンクフロイドこだわりの立体音響

ピンクフロイドはそもそも、ライブで複数のスピーカーを設置したり、
『狂気』では発売当時4chミックス(quadraphonic)のレコードも作ったり、
『ファイナルカット(1983)』では立体録音技術ホロフォニクスを採用したり、
等々、立体音響へのこだわりの強いバンドである。

本作もサラウンドで聴くことで、より作者の表現意図に近付けるはず。

ちなみにこのサラウンド・ミックスはピンクフロイドのもう1人のメンバーとも称される、
プロデューサーでありエンジニアのジェームス・ガスリーによるもの。
ガスリーによる2ch→5.1chサラウンド化の手腕は素晴らしく、職人芸の域に達している。

さらにSACDならではの高音質はヴォーカルやシンセで感じられる高音の艶ややかさや、ふくよかで広がりのあるギターに包まれる快感などをもたらし、 音楽を"聴く"というより"体験"すると言うのに相応しいレベルまで高めてくれる。



サラウンドの印象

バンドの音はオリジナルの定位感を保ちつつ、より広がりを持たせるミックスが基本。
随所で鳴らされるSEは360度の定位をフルに駆使し、
オリジナルを遥かに凌ぐ臨場感で恐怖、狂気を演出。

SEの印象に関して言葉にするなら、
オリジナルでは映像を観ているような感覚だったものが、
5.1chではその場で体験しているような感覚へとグレードアップ。



プログレッシヴロックを代表するアルバムとして

楽曲的にはいわゆるプログレらしさ、
「テクニカルな演奏」や「複雑かつ極端な曲構成」といった要素は感じられないが、
音楽性よりも哲学的な歌詞やコンセプトアルバムとしての構成力、
アルバム全体を通して表現する芸術性の高さにプログレらしさを見出すことは可能。



歌詞の重要性

アルバム発売以前に来日し『狂気』を演奏したことがあり、その際、
「月の裏側 ―もろもろの狂人達の為への作品―」
と題された全曲の対訳を観客に配布したという。
彼らの歌詞への強いこだわりが伺えるエピソードである。


次回(後編)では各曲目に沿って解説。


『ピンクフロイド/狂気(1973)』SACD(2003) EU盤の商品画像

最初は違和感、というか正直「ちょっとさえないかなぁ」などと思っていた。しかし後になってサラウンドの音の透明感や広がり、奥行きのある複雑な音と音の重なり合いをすごく上手く表現している素晴らしいジャケットアートだと思うようになった。


国内版と同じようなものだが若干のレイアウトの違いがある。


レーベルは国内版とは大分異なる。正しく収納するとブックレット裏と画像が繋がって見えるのがかっこいい。


ブックレットは全20ページフルカラーで画像満載



狂気 (30周年記念盤)(SACD)

The Dark Side of the Moon




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