ここに5枚のDVDがある。
3枚は『展覧会の絵』のライブで、1枚はベルギーのTV番組『POP SHOP』のライブ。
さらに、もう1枚にはその両方が収録されている。
自分は重複したコンテンツを所有するのを好まないのだが、不本意にもそうせざるを得なかった。
どうしてこうなったのか、その理由とこれらの作品の様々な問題点について語ってみたい。
音源版と映像版は別ライブ
まず基本的な部分だがELP『展覧会の絵』という作品はCDの音源とDVDの映像作品とでは別のライブを収録しているというのがまず紛らわしい。しかし2008年発売のCD2枚組デラックス・エディションのディスク2には映像作品と同じライシアム・シアターでのライブが収録された。そこでは映像版には未収録の場合がほとんどの『未開人』と、どの映像版にも収録されていない『ナットロッカー』を聴くことができる。
時期的には映像版が先で1970年12月9日ライシアム・シアターで収録。音源版は翌1971年3月26日ニューキャッスル シティー ホールで収録。
悪名高い映像処理
良く知られたことだと思うが、『展覧会の絵』の映像作品には当時のロックの映像にありがちなサイケデリックなエフェクトが施された箇所があり、場面によってはバンドの姿がほとんど、もしくは全く見えなくなってしまうという迷惑な問題がある。
エフェクトが最高潮に達した時、夥しく切り替わるマーベルコミックの画像が画面いっぱいに溢れる。
各DVDの収録曲と特徴を解説してみる
エマーソン、レイク&パーマー/展覧会の絵(完全版) 2000年
発売元:バップ 規格番号:VPBR-11133
[収録曲]
1.未開人 - The Barbarian
2.石をとれ - Take A Pebble
3~13.展覧会の絵 - Pictures at an Exhibition
14.ナイフ・エッジ - Knife Edge ~ ロンド - Rondo (※ライナーやジャケ裏にはナイフ・エッジのみ記載)
良い点:
『未開人』が収録されている。
『ナイフ・エッジ ~ ロンド』の部分はエフェクト無しの元映像が収録されている。
悪い点:
字幕と曲名のキャプションがあるのは良いのだが消すことができない。
音量レベルが余りにも小さく音質も良いとは言えず迫力がない。
『展覧会の絵』以外の曲はテープの回転が遅く、キーが半音下がった状態で収録されているという致命的な問題がある。
『展覧会の絵』以外の曲の画質が悪い。
『展覧会の絵』の部分の画質はそんなに悪くはないが彩度が乏しく寂しい色見。
映像特典:
映画として上映された際のオリジナル劇場予告編。
Emerson, Lake & Palmer/Pictures at an Exhibition 2002年
発売元:Classic Pictures 規格番号:DVDP002
[収録曲]
1~11.展覧会の絵 - Pictures at an Exhibition
良い点:
ステレオだけでなくドルビーデジタル5.1chが収録され高音質になった。
画質が良い。彩度が強めでカラフルな色見。
悪い点:
『展覧会の絵』以外の曲は収録されていない。
特典:
メンバーのプロフィールやバンドの歴史、写真、ディスコグラフィー、ムソルグスキーのプロフィールなどを静止画像と文字で見ることができる。アートギャラリーという項目では展覧会の絵に因んで幾つかの名画が表示される。
Emerson, Lake & Palmer/Pictures At An Exhibition - 35Th Anniversary Collector's Edition 2005年
発売元:Classic Pictures 規格番号:DVD8047X
[収録曲]
1~11.展覧会の絵 - Pictures at an Exhibition
良い点:
ステレオとドルビーデジタル5.1chに加え、DTS5.1chが収録されてさらに高音質になった。
映像は2002年版と同じ画質と色見。
悪い点:
『展覧会の絵』以外の曲は収録されていない。
特典:
ウクライナ国立交響楽団 (Ukraine National Symphony Orchestra)による『展覧会の絵』の音声が収録されている。画面には額縁が表示され、その枠内にCG映像などが表示される。
EMERSON LAKE & PALMER / MASTERS FROM THE VAULTS 2004年
発売元:Intense Media Ltd. 規格番号:INT1524
(※ベルギーのTV番組『POP SHOP』のライブ)
[収録曲]
1.The Barbarian
2.Rondo / Bach Improvisations
3.Drum Solo
4.Nut Rocker
5.Take A Pebble (Including : Ballad Of Blue)
6.Knife Edge
良い点:
『未開人』が収録されている。
高音質というわけではないが迫力のある良い音質。
悪い点:
画質がひどい。元の映像が古いのは仕方ないが動画の圧縮に問題があり、引きの映像がモザイク気味に見える部分がある。
EMERSON LAKE & PALMER / Pictures At An Exhibition (Special Edition) 2010年
発売元:Eagle Rock Entertainment 規格番号:EV303019
[収録曲]
1~11.Pictures at an Exhibition
12.Take A Pebble
13.Knife Edge
14.Rondo
良い点:
画質が良い。2002年、2005年と比べて彩度は控えめでナチュラルな色見。
ステレオのみの収録だが切れのある高音質。
悪い点:
『展覧会の絵』以外の曲も収録されたのは良いが『未開人』が入っていない。
サラウンドが収録されていない。
特典:
ベルギーのTV番組『POP SHOP』のライブ。
[収録曲]
1.Interview
2.Rondo
3.Nut Rocker
4.Take A Pebble
5.Knife Edge
6.Blues Jam / Nutrocker
(曲名の表記がMASTERS FROM THE VAULTSとだいぶ異なっているがThe Barbarianが入っていないこと以外は全く同じ内容)
良い点:
元の映像の古さはともかくMASTERS FROM THE VAULTSのように引きの映像がモザイク気味に見えることはない。
MASTERS FROM THE VAULTSに比べて、映像のゴミが少なかったり、僅かだが色見が良いと感じられる。
悪い点:
『未開人』が入っていない。
どうしてこうなった!!
さて、不本意ながら重複した内容のDVDを5枚も購入。
どうしてこうなってしまったのか?
それぞれの収録内容とそれぞれを購入した順番の、そのどちらにもそうなった理由がある。
最初に購入したのが幸か不幸か2010年の『Special Edition』だった。
これには『展覧会の絵』『POP SHOP』の2つのライブが収録されていてお得感があった。
だがしかし、そのどちらにも『The Barbarian』が入っていないことに後で気付いた。
そこで『MASTERS FROM THE VAULTS』『展覧会の絵(完全版)』を求めることになる。
それらがあれば『Special Edition』は不要になるだろうと思われた。
しかし入手してみるとそのどちらも画質、音質などにクオリティ的な問題があることがわかった。
つまりどちらも『The Barbarian』1曲のためだけに持っていなくてはならないということだ。
さらに今度はやはりサラウンド好きとしては5.1ch仕様の『展覧会の絵』も聴いてみたくなった。
そこで2002年の『ドルビーサラウンド収録版』を入手。
『Special Edition』に収録のステレオ音声もかなりの高音質だったのだが、やはりサラウンド版は臨場感が全然違った。ドラムの迫力や重さがスゴイ。会場の雰囲気が生々しく感じられる。
そして最後にやっぱりドルビーサラウンドよりもDTSの方を持っていたいし、この際だからと『35Th Anniversary Collector's Edition』も入手したのだった。
結果として5枚の内、2002年の『ドルビーサラウンド収録版』は不要になったのだが、これは単純に購入した順番なので仕方がない。それ以外の4枚に関してはこのバントやこの作品に興味を失くさない限りは持っていなくてはならないものに違いない。
エマーソン、レイク&パーマー『展覧会の絵DVD』の感想・レビューのブログ