Aパート『まる子、オシャレな喫茶店に行きたい』のまる子のセリフ。
「もし今、変な人に声かけられたらどうする?」(中略)「誘拐犯とか……」
喫茶店でお母さんがトイレに立ち、たまちゃんと2人、子供だけが取り残されたカタチで不安になったためそんな想像をしてしまう。
果たして「変な人」は現れてしまい、それがオチに繋がっている。
一方「誘拐犯」はなんとBパートに登場する。
Aパートで提示されたセリフを全然別の話のBパートで回収というのはなかなか珍しい。普通はやらない。これはもう超伏線回収である。
……という訳でとても驚いた。しかしこの2021年10月31日放送分は、それだけではなく話も面白かった。
Aパートの『まる子、オシャレな喫茶店に行きたい』は時代考証的なツッコミ要素が満載。
「ハロウィン柄のお菓子」とか、「フルーツサンドにキウィフルーツ」とか。あの時代にはソレはないでしょ!という外しが楽しめる。
リアルタイム視聴世代の子供たちには分からなくても、その親のさらに上の世代には分かってしまうだろう。
さらにBパート『まる子の金のオノ銀のオノ』はアレンジが効いた展開とさくらももこへのリスペクトが詰まった傑作。
まず、神様が住んでいる(?)泉の底の空間を見せてしまっているのが画期的。それだけでもかなり面白い。
これはコジコジの物知りじいさんを彷彿とさせ、いかにもさくらももこ的だ。あまり神様らしくない神様、という意味ではゲタ屋を彷彿とさせる。
藤木にまつわるお馴染みのネタもど真ん中直球でクリティカルに笑わせる。
原作からどんどんかけ離れていく筋を追いかけるのも楽しかった。
花輪の家から「金のオノ銀のオノ」が盗まれた噂を藤木が知る場面は、爆笑と同時にサスペンス的衝撃もあった。
その花輪邸の部屋は見た目がいつもと変わらないのも可笑しい。花輪邸自体がおとぎ話なのだということが分かる。
終盤“ためぞう”のくだりでは遂にクライムサスペンスにまで至る。
ここまでくるとAパートもさり気なくサスペンス性を持たせたディテクティブものだったことに気付く。ABパート2つのサスペンスを超伏線回収によってリンクさせるという離れ業をやってのけた、といえるのかも知れない。
放送開始30周年記念 ちびまる子ちゃん 第1期 Vol.1 [Blu-ray]
放送開始30周年記念 ちびまる子ちゃん 第1期 Vol.2 [Blu-ray]
ちびまる子ちゃん 感想・レビューのブログ