ついに手に入れたHDリマスター画質
細やかな描線、緻密な背景描写が以前のDVDとは比較にすらならない高精細で観ることができる。
セルの色彩の美しさや透過光のきらめきも素晴らしい。
ブルーレイ盤の登場で真に100インチで楽しめる画質を手に入れた。
ブルーレイ盤の価値を底上げする鈴木敏夫の序文
この作品集は2005年に発売されたDVD『ジブリがいっぱいSpecial ショートショート』と比べ、
高画質化はもちろんのこと、新作映像の追加や映像特典として対談なども収録し価値を高めている。
しかしなんといっても鈴木敏夫氏による書下ろし序文『アニメーターという人種』これに尽きる。
この文章を読むのと読まないのとでは、ここに収録された作品群の楽しみ方が大きく違ってくる。
鈴木敏夫=ジブリであることと、この人の凄さというものを同時に実感した。
「これってジブリ解散後だからこそ書けたことなのかなぁ……」と思うと感慨深いものもある。
アニメ業界の裏側を描いたTVアニメ『SHIROBAKO(2014)』登場人物の菅野光明(庵野秀明がモデル)のセリフ「アニメーターも人間だから、この仕事はお前にしかできないって言われたいんだよね」を連想した。
宮崎駿・自己肯定の選択肢
自分はこれを観てループの果てに辿り着いた奇跡(トゥルーエンド)と受け止めることができた。
ノベルゲーム好きならではの解釈。
「ここに描かれた以外にもたくさんの選択肢とバッドエンドやノーマルエンドがあったに違いない」
などと想像を膨らませたりする。
もちろんこの作品は映像作品であってゲームではない。
監督にとっては“作品を作ること”についての模索をダイレクトに作品化したものなのだ、と考えたい。
ここへきて宮崎駿はこれまではしなかった、残酷な場面をリアルに描写することや悲劇的結末を描いた。
けれど最後には「壊れた世界の唯一の希望の象徴」である翼の生えた少女を開放する。
宮崎駿監督が、アニメーション作家として何をなすべきなのか。
巡り巡って辿り着いた答えがこの作品のラストに提示されているのだ。
宮崎駿『On Your Mark』の感想・レビューのブログ